“また”

俺は必ずお前に会いに行く。

毎日誓ったから。

そして、この言葉が俺の支えだから。

この言葉を言うと必ず会えそうな気がする。

日常が戻りそうな気がする。

Ｔｈｅ 　Ｓｅａ　Ａｒｏｕｎｄ　Ｕｓ．

「弦一郎！精市が倒れたッ！」

その報告は突然だった。

「な、何ッ？！」

「今から病院に行くところなんだが、弦一郎はどうする？」

「俺も行く」

蓮二と俺は病院に向かった。

夏以来行くことがなかった病院。

もう二度と来たくないと思っていた。

ピッピッピッ

規則正しく心電図の音が少し広めの病室に響いていた。

「・・・蓮二、精市に何があったんだ？」

「今日の朝、急に倒れたらしい」

ガチャ・・・

部屋に白衣を着た医者が入ってきた。

「君達は・・・確か幸村君のお友達だったね・・・」

「はい・・・」

「先生、精市は何て病気なんですか？」

「・・・」

先生は精市を見て言葉を発した。

「幸村君は・・・ただの風邪だ」

「じゃあ何で入院なんて」

「それは・・・少し風邪を拗らせた様なんだ」

「じゃあ、精市は何でもないんですね」

「安心してください」

そう言って先生は軽いお辞儀をして部屋を出て行った。

その日は結局、精市は目を覚まさなかった。

次の日もその次の日も・・・。

日に日に悪くなっていく病状。

「そういえば・・・精市は何て病気なんだろう・・・」

先生はただの風邪と言っていたが、あの時から気になっていたことがある。

精市の病名を聞いた時の歯切れの悪い返事。

薄々は気づいていたが、多分精市は風邪じゃない。

「お前はいつ目を覚ますんだ？」

ぎゅっと精市の白い手を握った。

何も返事が返ってこない。

聞えるのは精市の声ではなく心電図のピッピッピッという音だけだ。

「・・・今日はもう帰るな。また来る」

パタン・・・と部屋のドアを閉めた。

次の日も俺は病室にお見舞いに行った。

精市はまだ目を覚ましていないと思って。

「やぁ」

部屋のドアを開けるとそこにはいつも通り微笑んでいる精市がいた。

「せ・・・精市・・・？」

「何突っ立ってるんだよ。早くこっちに来て」

「あ、あぁ・・・」

「久しぶり、弦一郎」

俺の目の前にいるのはホントに精市なのだろうか。

「精市・・・だよな？」

「じゃなければ誰に見えるんだよ」

そこにはいつもどおりの精市がいた。

今まで寝ていたのが贋者じゃないかと思うぐらいだった。

「俺・・・今迄寝てたんだよね？」

「あ・・・ああ」

「良かった。起きれて」

「ああ、本当に良かった」

「うん。もう一度弦一郎の顔が見れて・・・」

そう言って、精市は窓の外を見た。

「またいつでも見れるじゃないか」

「どうだろう・・・」

「精市らしくないな・・・」

「そう？きっと久しぶりに起きたから疲れてるのかな？」

「だな。じゃあ俺はこの辺で・・・」

「また・・・来てくれるよね・・・？」

「当たり前だ。では、またな」

「うん。また・・・ね」

俺は精市に見送られ部屋を後にした。

“また”

それは絶対会えることを信じるための呪文。

そして、誓いだ。

－ｃｏｎｔｉｎｕｅ－





アトガキ


最後まで読んでくださって有難うございましたッ！！

ごめんなさい・・・。

前の話のあとがきで何でタイトルに“海”が入っているかが分かる。とか言っていたのに分かりませんでしたね・・・。

た・・・多分・・・次ぐらいには分かるかな？

訳分からない話ですが見捨てないでくださいね。

以上、アトガキでした。

それと最後に

幸村サマＨａｐｐｙ　Ｂｉｒｔｈｄａｙ！！